今年もバフェット先生からお手紙が届きましたね。それでは内容を見ていきましょう。今回も特に日本の個人投資家にとって有益な部分に絞ってます。
<当記事の内容>
・今年のお手紙の議題一覧
・留保利益の力
・バークシャーの主な投資先
・今年のお手紙の議題一覧
今年のお手紙で取り上げられていた議題は以下の8つ(9つ?)でした。「投資家への手紙」と言っても、宛先はバークシャー・ハサウェイの株主なのでバークシャー・ハサウェイの2019年度の業績が主な内容です。
ここでは特に日本の個人投資家にとって有益だと感じた「内部留保の力」と「主な投資先」に絞って時折コメントを織り交ぜつつ意訳してお送りします。
(・新GAAP︎ってやっぱクソやな)
・内部留保の力
・非保険事業
・生損保険事業
・バークシャーハサウェイ電力
・主な投資先
・ウォーレンとチャーリーが去った後のバークシャー
・最近の「役員」の役割
・その他コメント
・内部留保の力
(kyutoメモ):今年の冒頭の議題は「内部留保」ですね。一言で言うと事業で稼いだ利益のうち、株主へ還元せずに事業に再投資するお金の事です。
1924にエドガー・ローレンス・スミスは「長期投資としての普通株」という本を出版した。彼自身の思想のみならず、投資界の常識を大きく変えた本だ。
彼は「景気拡大期は株のリターンが債権に勝り、景気後退期は逆に債権のリターンが株に勝る」という仮説を立証するために本を描き始めたらしい。尤もらしい仮説だが、彼が発見した事実は意外なものだった。
故に彼の本はまず謝罪から始まる。「これは失敗の記録である。今まで常識とされてきた通説を事実で支持する事に私は失敗した。」
彼の発見を要約として初期の査読者である、かのジョン・メイナード・ケインズの言葉を引用しよう。
“I have kept until last what is Mr. Smith’s most important, and certainly his most novel, point. Well-managed companies do not, as a rule, distribute to their shareholders the whole of their earned profits. In good years, if not in all years, they retain a part of their profits and put them back into their business. Thus, there is an element of compound interest operating in favor of a sound industrial investment. Over a period of years, the real value of the property of a sound industrial is increasing at compound interest, quite apart from the dividends paid out to the shareholders.
John Maynard Keynes
(以下、太字部分の意訳)
健全に経営されいる企業は利益の全てを株主に還元するような事はせず、大抵一部の利益を事業に再投資する。したがって、複利効果のような働きが発揮される。順調に成長する企業の価値は、長期的には複利的に上昇する。(斜体強調はケインズ男爵によるもの)
(kyutoメモ):“株式投資は長期的に取り組めば複利効果によって大きなリターンが得られる”というのは今を生きる僕らからすれば常識かもしれませんが、1924年にこの本が出版される以前は知られていなかったという事ですよね。過去の偉人が残してくれた数々の研究成果を若い頃から自由に読むことができる今の20代は恵まれているなあと改めて感じました。
私が初めて読んだ投資本はバフェット先生が敬愛するベンジャミン・グラハム先生著の「賢明な投資家(英語版)」だったのですが、毎ページ名言や極意のオンパレードで目から鱗が落ち止みませんでした。以来、読書をする習慣がついた事で知識も複利的に積み上がってきたので良い事尽くしですね。
バークシャーでも僕とチャーリーはこの内部留保を最大限活用できるように努めてきた。まずはすでに所有している事業への投資。それに加えて、事業で使用する資本に対して良いリターンが得る事ができ、有能で誠実な人によって経営されていて、合理的な値段がついている事業へ投資する機会も常に伺っている。
以下に挙げたのは私たちの株式資産の中で最も大きい10銘柄だ。ここでは配当と内部留保を分けて見てみよう。多くの場合、これらの企業は内部留保を事業に再投資して拡大させるか効率をあげようとする。また時には自社の株を買い戻す事もあり、これは将来その企業があげる利益の私たちの取り分を大きくする効果がある。
もちろん、この内部留保の全てが私たちに還ってくる訳ではない。投資に失敗はつきものだ。だが、理屈と過去の経験から言ってこれらの企業からは全体として少なくとも内部留保の額と同等、おそらくはそれ以上のキャピタルゲインが得られるだろう。
・主な投資先
これは私たちの保有銘柄を時価総額順に15つ並べたものだ。私たちはこの15つの資産を株式市場における「賭け」だとは微塵も思っていない。
今ここにあるのは大きな負債を抱える事なく、事業に必要な資本に対して20%以上の利益を上げている企業の集まりである。事業が理解しやすく、実績のある大企業でこのようなリターンを出せるのはどのような状況であろうろ素晴らしい事だ。長期国債などの債権のリターンと比べるとその差は歴然だ。
仮に今の金利と法人税率が続くとすれば、ここで挙げたような株式資産はリターンが固定された債権などのを凌ぐ事は間違いないだろう。
ただ、この楽観的とも言える予測に一つ警告を付け加えたいと思う。明日の株価は何が起こっても不思議じゃ無い。時には50%、もしかしたらそれ以上株価が急落する事もあるだろう。しかしアメリカ経済の追い風とスミスが説明してくれた複利効果のおかげで、長期的な投資先としてアメリカの株式市場はこれからもとても頼もしい選択肢となるだろう。ただ、他人のお金を使わずに自分の感情をコントロールできる人に限る。そうでない人は気をつけろ!
(kyutoメモ)「他人のお金を使わずに自分の感情をコントロールできる人」というのがポイントだと思います。「他人のお金を使った投資」としては信用取引などがありますね。こういった手法はリスクが大きいので私はオススメできないと感じてます。
次の「自分の感情をコントロールできる人」と聞くともともと落ち着いた性格の人を最初は想像したのですが、コントロールが上手くなるような努力は色々方法があると思います。
例えば読書です。鉄板の投資本には大抵過去のアメリカ株式市場の推移が載っています。それを見ると、暴落が起きても必ず市場は回復してきた事を確認できます。もちろんこの先どうなるかなんて誰にも分かりませんが、過去を知る事で自分の投資の指針に自信を持ちやすくなる事は確かだと思います。
以上、バフェット先生からの手紙2020の要点翻訳でした。コメントには全て目を通してますので、質疑討論ははコメント欄にてしていただければと思います。
kyuto