分散効果は期待できる一方、流動性の違いには注意が必要だと思いました!
今回は質問箱に対する回答記事。質問者さんの提案のメリット、デメリット、「私ならこうするかな?」の提案をまとめてみました。
①idecoとNISAでは「流動性」が大きく異なる
②流動性が負担となるシナリオ
③「全世界株式」も視野に
④kyutoの確定拠出年金運用状況
⑤まとめ
質問者様のご提案のようにidecoで米国株、NISAで日本株/新興国株という風に投資すれば分散の効果ができる一方、idecoとNISAで流動性が違う点に注意が必要だと思いました。
上記のような運用をする場合はidecoに入れた資金は基本的に60歳になるまで引き出す事ができないという制約が負担にならないような立ち回りが必要になるかと思います。
idecoとつみたてNISAはどちらも投資の運用益に対する税金が免除になる、一般人にとって大変ありがたい制度です。idecoの場合はさらに掛け金が控除となるというメリットもあります。ただ、60歳までは原則引き出し不可能なんです(大切な事なので2回言いました)。
idecoとNISAで運用する資産がどちらも余裕資金で主な目的が老後の備えであった場合はあまり気にする必要は無いかもしれない。しかし余裕資金が十分に無く、住居の購入費や子供の教育資金などの人生半ばのライフイベントで活用したい場合はidecoの縛りが裏目に出てしまうかもしれません。
真っ先に思いつくのが米国株だけ好調で日本/新興国が振るわない時期にお金を使うタイミングが来てしまう事です。質問者様の案では米国株はidecoに入っているので、得られた利益を活用できません。さらにNISAに入っている日本・新興国を売却した時に評価損益が発生してしまった場合は損益通算(損失分を利益と相殺して節税できる制度)が利用できません。
補足ですが、「近年はグローバル化が進んでいるので国際分散はリスクヘッジにはなりにくくなった」という意見もあります(運用のプロが「国際分散投資」の効果減少を感じている理由https://gentosha-go.com/articles/-/22104)。簡単にまとめると世界中の企業がより世界中を相手に事業を行うようになったので、何か悪い事(コロナとか)が起こると世界中の株式指数に影響しちゃうよねという意見です。実際2020年のコロナショックの時は米国株も日本株も新興国株もみんな仲良死しました。ただ、米国株は回復も早い事も多く、今回も新興国と日本株よりも元の水準に戻るのが早かったです。
最後に、国際分散投資が目的であればシンプルに全世界株式ファンドに投資する事も視野に入れても良いと思いました。代表的なものだと「VT(ヴァンガード・全世界株式ETF」や「EmaxisSlim全世界株式(オールカントリー)」あたりでしょうか。これらのファンドに投資するだけで世界中の上場企業に投資する事ができるため、国際分散の最も簡単な手段の一つです。
idecoもNISAも一般口座も全て全世界株式に投資すれば、国際分散投資の効果は最大限発揮されるのではないでしょうか(株式自体の価格変動のリスクは排除できません)。もし企業型の確定拠出年金に全世界株式系が無いなら、idecoのみ米国株100%という選択肢もアリだと思います。全世界株式と言っても半分くらいは米国株ですからね。
質問されて気になったので久しぶりに勤め先の確定拠出年金の運用状況を覗いてみました。参考になるか分かりませんが詳細を公開します。
毎月の掛金:約4万円(100%企業拠出)
加入期間:2年9ヶ月
掛金:約114万円
評価額(2021年1月17日時点):約140万円
資産配分:外国株式のパッシブ運用型ファンド(米国株比率70%)に全振り
なかなか好調ですね!
強制的に長期運用せざるを得ない仕組みの確定拠出年金なので、歴史的に最も高いリターンをもたらしてきた株式100%(※1)にしばらくは全振りでいいかなあと個人的には思ってます。引き出しの時期が近づいてきたら債権や現金に割いてリスクを抑えるもの視野に入れてます。
ご質問に戻りますと、最初の提案でも分散はできますがidecoの資金拘束を前提に計画を組む必要があると感じました。また、国際分散投資の手段としてVTなどの全世界株式ファンドの利用も検討の価値はあるかと思います。
ご自身の投資の目的を今一度見直し、上記の注意点を留意しつつ投資に取り組んでいただければと思います。御武運をお祈りしています。
kyuto