【2024年版】新社会人にファイナンシャル・プランナーがどうしても伝えたい確定拠出年金プランの選び方

<目次>
⓪まず結論から

①そもそも確定拠出年金って?
②典型的なプランの種類一覧
③プランの選ぶ際のポイント

④オススメは外国株式インデックス
⑤よくある”もったいない”プランの組み方

⑥元本保証プランの使い所
⑦筆者の確定拠出年金プランと運用実績
⑧最後に一番大切な事は・・・

 『確定拠出年金』って、今まで金融の勉強をする機会が無かった人にとってはハードルが高いですよね…。私も新社会人の時はいきなり説明されて、どう選べば良いか全く分かりませんでした…。ただ、今思い返せばこれがお金の勉強をするきっかけとなりました。

 ここではファイナンシャルプランナーでもある私が入社当初に感じてた事を思い出しながら、初心者でも分かりやすいように確定拠出年金プランの選び方のポイントを解説してみました。将来的に数百万円、場合によっては数千万円の差が生まれる内容なので是非最後までお読みください。「入社以来DCほったらかしだったから見直したいな」という先輩方ももちろん大歓迎です。

⓪まず結論から

 結論としては、「外国株式インデックス系のプラン100%が基本になる」かと思います。以下で順序を追って詳しくお話しします。

①そもそも確定拠出年金って?

 確定拠出年金とは2001年から日本に導入された私的年金の一種です。現役時代に加入者や勤務先が掛金を積み立て、その資金を加入者が運用プランを決めて60歳まで運用した結果の総金額が老後の年金として支払われます。積み立てる(拠出する)金額が確定しているので「確定拠出」年金。英名であるDefined Contribution Planを省略してDCと呼ぶこともあります。

 次に、確定拠出年金は大きく分けて企業型個人型があります。会社型ではDCを導入している会社が従業員の分の掛け金を拠出して、従業員自身が運用します(ありがたい!)。企業が拠出する金額を決めて、多くの場合は運用先の金融機関も指定されます。

 これに対して個人型(愛称はiDeco)では自分が全額拠出し、自分で預ける金融機関を選んで運用していきます。

 ここで問題となるのは、投資未経験の方がいきなり資産運用プランの選出を求められる事だと感じてます。

②典型的なプランの種類一覧

 拠出した掛け金は金融機関の提供するいずれかのプランで運用する事になりますが、このプラン選びが多くの方にとって最大の関門となるのではないでしょうか。

 学生の頃から資産運用をしてきた人は稀だと思うので、確定拠出年金が初めてという方がほとんどのはず。多くの新入社員のように1日講習を受けても、「プランの種類も多いし…聞きなれない単語ばかりだし…銀行の人の説明聞いても良く分からない…」、こういう印象を持ってしまう方も多いのではないでしょうか。

 でも大丈夫!仕組みはそこまで難しくないし、実はプラン選びの最適解がほぼ決まってます。まずは良くあるプランの種類を見ていきましょう。

・定期預金タイプ(オススメ度:★☆☆☆ 一番オススメしない!!)
 昔はとても人気だった、掛け金をそのまま定期預金として運用するプラン。運用実績は銀行金利次第になります。初心者の方はついつい選びがちなんですけど、DCの運用プランとしてはメリットがとても少なく、個人的には一番オススメしないです!(理由は後述します)

・債権タイプ(オススメ度:★★★☆☆)
 掛け金で債権を購入して運用していくタイプ。運用実績は主に債権の利回り次第です。
 債権を購入するという事は簡単に言うと”誰かにお金を貸す事”です。国に貸す場合が”国債”。企業に貸す場合が”社債”。貸したお金は予め決められた期間がすぎると利子付きで返還されます。貸し先が破綻しない限り元本は失われないというのがメリットです。

・日本株式インデックスタイプ(オススメ度:★★★☆☆)
 掛け金で日本企業の株を購入するタイプ。株を買って企業のオーナーになる事で、その企業が生み出す利益を分けてもらいます。
 インデックスとは”指数”という意味で、株式市場の指数と連動した実績(市場平均)を目指す投資をインデックス投資と呼びます。日本株式インデックスでは全国のたくさんの企業の株を少しずつ買う事で日本市場の平均(例えば日経平均)に連動した運用成績を目指します。運用実績は日本企業の株価次第です

・外国株式インデックスタイプ(オススメ度:★★★★★)
 掛け金で世界中の企業の株を購入するタイプ。世界中の株式を購入して全世界の株式相場の平均値を目標とした運用方法です。運用実績は外国企業の株価次第です。
 詳しくは後述しますが、最適と言えるプランだと思います。私は外国株式インデックス100%のプランで60歳まで保有する予定です。

・株式アクティブ運用タイプ(オススメ度:★★☆☆☆)
 株を積極的に売買する事で市場平均を上回る事を目的にしたプラン。運用実績は主に掛け金を運用するファンドマネージャーの手腕左右されます。一見、魅力的なプランに見えますが、歴史的には市場平均を上回れないものがほとんどです。

・バランス型タイプ(オススメ度:★★☆☆☆)
 上記の債権や株式の割合を決めてそれぞれ買っていくプラン。悪くはないのですが、手数料に注意が必要です。

 大体この6種類のどれかに当てはまるのではないかと思います。次に、具体的にどのプランを選べば良いか考えてみましょう。

③プランを選ぶ際のポイント

 資産運用で一歩目は「目標を決める」です。何のために、いつまでに、どのくらい資産を築きたいのかを決めれば、やらなければいけない事、やってはいけない事が見えてきます。

 DCの場合、60歳まで引き出せないという性質上、国民年金&厚生年金と合わせて老後の生活資金に充てる方が多いと思うので、ここでは「老後資金の準備」を目標として話を進めてみます。

考慮したいのは主に以下の4つのポイントです。
・過去のリターン実績
・リスク
・手数料率
・インフレ率


 1つ目は「過去のリターン実績」。未来は誰にも分かりませんが、過去の実績は確認できます。ほとんどの場合、過去の平均年利リターン順に各プランを並べると、預金<債権<株式となるはずです。

 米国株式市場の研究ではありますが、ジェレミー・シーゲル教授の名著『株式投資の未来』の中で、このリターンの大小関係は過去200年間遡っても覆らない事が分かっています(図1、参考図書1)。1801年に1ドルを株式に投資したら200年後に60万ドルに成長していたのに対し、預金のまま持って場合はインフレによって0.07ドルになっていました。

 過去は株式が一番リターンが高かったからといって未来もそうなるとは限りませんが、判断材料の一つにはなると思います。『過去は繰り返さないが韻を踏む』からです。

(図1)アメリカで株式、国債、金、現金のインフレ調整後の価値を辿った大変有名なグラフ


 2つ目は「リスク」。よく勘違いされがちなのですが(私も最初は勘違いしてました)、資産運用における”リスク”は「お金が無くなる確率」ではなく「リターンの振れ幅」を指します。図で表すと下のようになります。

 なんとなくイメージは付いたたでしょうか?ちなみに過去を遡るとリスクの序列としては預金<債権<株式となります。まず押さえていただきたいポイントとしては、『リスクとリターンは基本的に比例する』という事です。

 これだけだと「やっぱり株はリスクが高いんだ!危ない!」と思ってしまうかもしれませんが、実は『株式は投資期間が長いほどリスクが低くなる』事も分かっています(ココ!重要です!)。以下の図で示される様に、『15年以上の投資期間を取るとリターンは必ずプラスになった(米国株の場合)』事が過去の研究より明らかになっています(参考図書1)。この辺りもシーゲル先生の『株式投資の未来』で詳しく解説されています。

https://www.wealthnavi.com/contents/column/15/より引用)

 ここでもう一度DCの仕組みを思い出すと、原則60歳まで引き出す事ができないので、長期投資せざるを得ません。このように『長期的にはプラスになりやすい株式はDCと相性の良い資産である』と言えます。

 3つ目は「手数料率」。各プランには手数料率があります。「経費率」や「信託報酬」と表記されている事もありますが概ね同じ意味です。基本的に金融機関の手間が多くかかるプランほど手数料率が高い(高くて3%前後)です。例えば頻繁に株を売買するアクティブ運用タイプや、資産配分の割合自動調整オプションが付いているバランス型タイプなどがそうです。逆に、手間のほとんどかからないインデックス系のプランは手数料率が安い(0.1%前後)です。この手数料率は金融機関によって様々ですが、一つの基準として世界最大級の資産運用会社であるバンガード社のインデックス系投資信託は最安で0.03%です(2021年4月現在)。

 ここで押さえて欲しいポイントは『手数料は低く抑える事が鉄則』。年利1%、手数料率1%の投資リターンは1−1=0%です。手数料が高いほど得られるリターンは低くなる上に、歴史上はアクティブ運用のほとんどが市場平均に勝ててない事をチャールズ・エリス先生が名著『敗者のゲーム』で解説されています(参考図書2)。その大きな敗因の一つが高い手数料です。

 4つ目は「インフレ率」。インフレ率=物価の上がるペース。例えばインフレ率が1%だと、今年100円のものが来年は101円になります。お金の価値が落ちていくペースと言い換える事もできます。最初にプランの過去のリターンを考慮すべきと言いましたが、金融機関の作る資料はインフレ率を考慮していない事が多いので注意が必要です。プランのリターンが5%でインフレ率が1%だった場合、インフレ込みの実質リターンは4%となります。当然、リターンがインフレ率以下だったら資産の実質価値は年々減っていきます。ここで押さえて欲しいポイントは『インフレ率を考慮してプランを選ぶ』ことです。

④オススメは外国株式インデックス

 ここで冒頭の結論に戻るのですが、「外国株式インデックス系のプランが多くの方にとって最適解となる」と思います。その理由を上記の注目ポイントと照らし合わせながら解説します。

・過去のリターン実績が一番高い
 細かい実績は各金融機関によって様々ですが、外国株式インデックス型のプランの平均年利は概ね7〜8%なのでこの数字で話を進めます。外国株式というと「リスクが怖い」「暴落が怖い」などの印象を持っている方も多いかもしれませんが、過去の暴落を全部考慮しても長期的には平均年利7%くらいのリターンを残してきました。定期預金のリターンは精々0.1%なので約70倍、日本株式の平均リターンの4%(参考図書1)と比べてもかなり差があります。もちろんインフレ率にも圧勝です。この高いリターンが外国株式インデックスの最大の魅力だと思います。

・高リスクはDCと相性が良い
 一方で比較的高いリスクがデメリットでしょう。平均で年利7%くらいで増えるとは言え、2020年3月のように一時的に30%下落する事もあります。ただ、これはDC特有の性質が上手く相殺してくれます。
 DCは法律上60歳まで運用せざるを得ないため、30年以上に渡る長期運用になります。先ほどの「投資期間」と「リターンの振れ幅」の関係より、資産運用のリスクは運用期間が長いほど低くなる事が知られています(参考図書1、2)。世界株式の大半を占める米国株が15年以上の運用期間でマイナスに終わる事が無かったので、30年以上の期間を運用するとなるとさらにリスクを抑えられそうですね。

・手数料率が低い
 インデックス投資は目標指数を構成している銘柄を時価総額が大きい順に買っていくだけなので、金融機関にとって比較的手間は少なく、その分手数料率も低いです。高くても0.2%くらいなのではないでしょうか。手数料率はリターンに直接響くので低い手数料率は資産運用をする上では大きなメリットになります。

 まとめると、「外国株式インデックスは平均リターンが高く、リスクも長期的に運用すれば低減でき、手数料率も低い」。老後資金の準備を目的としたDCとの相性はとても良いのではないでしょうか。

⑤よくある”もったいない”プランの組み方

 ここで個人的に「ちょっともったいないなあ…」と感じる2つのプランの組み方とその理由についてお話ししたいと思います。

・投資怖い!預金至上主義タイプ
 個人的には「一番もったいない!」と思うタイプです。ただ、その気持ちはとても理解できます…。私も学生の頃はお金の話は苦手でしたし、投資はなんとなく怖い世界でした。しかし、いざ勉強してみるとそこまで難しい世界ではなく、上手く付き合っていけば人生の可能性を広げてくれるものだと今では感じています。

 例えるなら火のような存在かもしれません。考え無しに扱えば火傷しますが、扱い方を学べば光を灯せたり、暖を取れたり、美味しい料理を作れたりします。投資も無作為に取り組めば資産を失います。でも真面目に取り組めば資産は増えるし、収入も増えるし、日々の生活に余裕も生まれるし良い事尽くしです。

 話を戻しますと、定期預金の最大のデメリットは銀行の金利がインフレ率を下回る危険がある事だと思います。IMF(国際通過基金)発表の最近の日本のインフレ率は以下の通りです。

2014年…2.76%
2015年…0.79%
2016年…-0.11%
2017年…0.47%
2018年…1.20%

 金利が0.1%の定期預金にお金を預けた場合、2016年以外の年では実質リターンがマイナスとなってしまう事が分かりますでしょうか。よく定期預金は低リスク低リターンと言われますが、今の超低金利環境においては低リスクマイナスリターンとなってしまう可能性が高いです。今回挙げたプランの中で一番手堅く資産を減らせると思います。

 ちなみにバブル期は銀行の定期預金の金利が7%以上ある時期がありました。年配の方に定期預金が大好きな人いるのは主にこれが理由かもしれません(年配の方と金銭感覚がズレがちな一因でもある気がします)。

・外国株怖い!日本株オンリータイプ
 よく日本株は低リスク、外国株は高リスクという文言を耳にするのですが、これを裏付ける証拠を3年間勉強してきてほとんど見た事がありません(知っている方がいたら教えてください!)。

 仮に日本株の方がリスクが低いとしても、歴史的にはリターンも米国に比べると低いです。株式特有のリスクは前述の通り、DCのように運用期間を長くする事でリスクはかなり小さくする事ができるので、同じ株式ならわざわざ低いリターンを出してきた方を選ぶメリットはあまり無いと感じます。

⑥元本保証プランの使い所

 ここまでは外国株式のインデックスプランを主軸に運用する事を勧めて来ましたが、リターンの低い元本保証型のプランにも使い所はあるとは思います。

 例えば60歳にまとめてDCを引き出す予定の方にとって一番困るのは直前に暴落に見舞われる事です。対策の一つとして、引き出す時期が近づいてきたら資産を少しずつ元本保証系のプランに移していく方法があります。一方で最後の数年間のリターンが低くなるのと資産移し替えの手数料が取られてしまうデメリットもあるので注意が必要です。最後まで運用益の最大化を狙うか、老後に備えてリスクを抑えていくかの選択になるかと思います。

 最後に私自身のDCの2023年4月現在の運用実績を公開します。運用プランは「外国株式インデックスプラン100%」です。

⑦筆者の確定拠出年金プランと運用実績

 新卒だった2018年から2024年まで6年間運用した結果、元本およそ200万円に対して4月現在の評価額が370万円。評価損益+170万円。リターンは+85%となかなか好調でした。2020年の3月頃はコロナショックで一時的に評価損でしたが、よくここまで巻き戻せましたね。「歴史的にはどんな暴落からも復活してきた(参考図書1)」という事実を知っていたおかげで慌ててプラン変更などする事なく保有し続ける事ができました。

⑧最後に一番大切な事は・・・

 以上、「新社会人にファイナンシャル・プランナーがどうしても伝えたい確定拠出年金プランの選び方」でした!いかがでしたでしょうか?

 友人や家族に読んでもらうつもりで、自分が新入社員の頃に知りたかったなあと思う内容を詰め込みました。あくまで一個人の意見ですが、何かの参考になれば幸いです。

質問がある方はコメント欄かツイッター等にお願いします・・・と言いたいところなのですが、本音としては「とりあえず『株式投資の未来』と『敗者のゲーム』を読んで欲しい!」と思う事が多いです。こういった内容を発信した際によくある質問の99%に対する的確な回答がこの2冊にあるからです。

投資のお話は難しいのでつい他人任せになってしまいがちです。

「DCの説明をしてた銀行の人がこう言ってたから・・・」
「友達がこう言ってたから・・・」
「SNSでフォロワー数が多い人がこう言ってたから・・・」
「たまたま見かけたブログ(当ブログを含む)でこう言ってたから・・・」

ですが、そうして他人任せにする事によって支払う「手数料」は決して安いものではないと思います。

例えば、DCの説明の行いにくる銀行の方はほとんどの場合、「外国株式インデックスプラン」を薦めないし、この記事に載っているような「選ぶ際のポイント」は説明してくれません。私が新社会人の時の説明会ではやたらと「バランス型プラン」の説明に時間を費やしていました。ちなみに手数料が一番高い(=最も銀行側の売上になる)プランも大抵このバランス型です。どういう意図なのでしょうね。

大切なのは知識を身に付けて自分で判断できるようになる事だと思います。

特に今回挙げた2冊は資産形成する上で私たち一般人の役に立つ事は間違いないです。この2冊を「読んで損した〜」と言っている人は聞いた事がありません。なんなら投資に興味のある友人には私がプレゼントしたいくらい(笑)

冒頭で述べたように、DCはプランの選び方で将来的に数千万円の差が付く可能性がある決断です。ここで数千円を出して本を買って投資の基礎知識を身に付ける事は、将来的に数千万円のリターンが得られる、超高リターンな投資となるかもしれません。

もう一度リンクを貼っておくので、ここまで読むくらい投資に興味のある方には全力でオススメしたいです。

参考図書1:株式投資の未来(ジェレミー・シーゲル著)
「なんで株式投資は儲かるの?」という疑問に答えてくれる良書。
基礎的な内容も網羅しているので初めての投資本としてとても勧めやすい。


参考図書2:敗者のゲーム(チャールズ・エリス著)
「なんで株式投資するならインデックス投資が良いの?」という疑問に答えてくれる良書。
世界一の投資本は?と問われたら個人的にこの1冊を選びます。
そのくらい有益な知見が分かりやすくまとまっている名書中の名書。
ただ、投資の基礎知識はある程度知ってる前提なので、個人的には『株式投資の未来』から読む事をオススメします。

kyuto

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